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フォークリフトの死亡事故の事例:原因や事故防止の対策について

2020.10.21

フォークリフトの死亡事故の事例:原因や事故防止の対策について

倉庫の中での命に関わる労災の代表的な原因といえば、やはりフォークリフトに関わる事故ではないでしょうか。

フォークリフトは予期せぬトラブル事故の可能性を持つ特殊車両です。現場でフォークリフトの死亡事故を起こさないためには、過去に起きた事故の事例から学び、原因や防止対策を練っておくことが重要です。

死亡に至る事故は自社現場での事例も少ないため、現場内でのフォークリフト事故対策は商品破損の対策や他の作業者との接触対策などに偏りがちです。実際にどんな死亡事故が起きているのかを知ることで安全意識を高め、死亡事故を未然に防止するために改めて現場内の危険箇所を洗い出し、フォークリフト作業者自身の安全確保も含めた注意喚起を行うことで事故の抑止を行ってはいかがでしょうか。

フォークリフトでよくある重大事故の事例

フォークリフトの操縦で起こりうる死亡事故で多いのは順番に

・墜落や転落

・はさまれ・巻き込まれ

・作業者への激突

・転倒

の4分類です。以下では詳細と事例を紹介していきます。

墜落・転落

フォークリフト作業中の作業員が、フォークリフトごと墜落・転落したり、荷台から墜落・転落したりする事故をいいます。

<墜落・転落事故の事例>

災害発生当日、作業者Aは、型枠資材の廃材を資材置き場からフォークリフトで運搬し、焼却ピットに投入する作業を行っていた。フォークリフトを投入口前に止め、フォークを揺すってフォークに載せた廃材を焼却ピット内に振り落としていたところ、フォークリフトが前に傾き、フォークリフトとともに焼却ピット内へ転落し、死亡した。

平成26年~28年までの死亡事故件数……21件

はさまれ・巻き込まれ

フォークリフトのマストやヘッドガード、他の車両との間にはさまれてしまう事故をいいます。注意不足や誤った操作による事故の事例が多いです。

<はさまれ・巻き込まれ事故の事例>

被災者は、トラックの荷台の積荷を、荷台の上にフォークリフトで持ち上げたパレットの上に載せ終え、荷台からフォークリフトの運転席に移動する際、一旦地上に降りることなく、直接荷台からフォークリフトのマストと車体の間を通って運転席に移動する途中、誤ってティルトレバーとリフトレバーに触れ、後傾してきたマストのマストクロスメンバーとヘッドガードに頭部を挟まれたと推定される。

平成26年~28年までの死亡事故件数……19件

作業者への激突

フォークリフトと作業者が激突することで起こる事故をいいます。注意不足だけでなく、車両の点検ミスや整備不良からも起こる可能性があります。

<激突事故の事例>

船積み用のパルプの結束作業中、作業者Aが運転していたフォークリフトが前進走行のまま突然作業場に突っ込み作業者Bに直撃、急停止したが間に合わず作業者Bは約1メートル跳ね飛ばされた。

フォークリフト作業者Aが運転していたフォークリフトは積荷が高く前方の視界が良くなかった。構内の場所が広いため大丈夫だろうと思い込み安全確認を十分行っていなかった。さらにAはフォークリフト運転技能講習を修了したばかりで日が浅かった。

平成26年~28年までの死亡事故件数……17件

転倒

フォークリフトの転倒や横転により強打や下敷きになってしまう事故のことです。

<転倒事故の事例>

かなり早い速度で走行していたが、駐車場の手前でブレーキをかけながら右にハンドルを切ったとき、フォークリフトが転倒した。被災者は、頭部をフォークリフトのヘッドガードを支える鉄枠とコンクリート路面との間に挟まれた。

AはBにフォークリフトを取りに行くよう指示し、Bは本社事務所でキーが挿入されたままのフォークリフト(最大荷重3t)を運転して資材置き場まで移動中、建物の角で右折したところ、フォークリフトがスリップし、転倒した。Bは運転席から投げ出され、転倒したフォークリフトのヘッドガードの下敷きとなった。

平成26年~28年までの死亡事故件数……11件

出典元:
陸運と安全衛生No.576
職場のあんぜんサイト労働災害事例(厚生労働省)

フォークリフトの事故が起きる原因

フォークリフトの事故が起きる主な原因は、以下の5つです。

運転操作ミス

走行や荷役の運転操作ミスは、あらゆる事故の原因となります。運転手本人だけでなく周囲の作業者を巻き込んだ事故につながる危険もあるため、運転技術を正しく学び、実践することが重要です。

例)レバー操作を間違えた、ペダル操作を間違えた、速度を出しすぎた

安全確認の怠り

指差呼称確認による安全確認は免許取得の試験時だけでなく、日常的に行う必要があります。“大丈夫だろう”という気持ちから安全確認を怠ると、予測できない事故につながるケースもあるでしょう。安全であることが当たり前にならないように、日ごろから適度な緊張感を持ってフォークリフトを扱いましょう。

例)前後左右の確認をせず走行した、シートベルトの確認をせず走行した

フォークリフトの点検・整備不足

正しい運転操作や安全確認を心がけていても、走行装置や荷役装置に異常があればトラブルのリスクは高まります。フォークリフトに乗る前までに点検・整備を済ませ、車両の安全を確認しましょう。

例)長期間メンテナンスが行われていない、異音や異臭をそのままにしている

パレットの危険な積み方

作業効率を優先しすぎると「危険な方法でパレットを積む」ことになりかねません。パレットの数や重量を考慮し、荷崩れの起きない安全な積み方を心がけましょう。

例)不安定な積み方、作業手順を無視した積み方

フォークリフトの作業範囲が不明瞭

フォークリフト側がどんなに注意をしても、作業範囲内に他の作業員が入ってきた場合は事故のリスクが高まります。フォークリフトの作業範囲を明確にして表示を行い、運転手だけでなく周囲の作業者も事故を防ぐ意識が欠かせません。

例)運転手以外の誘導者がいなかった、作業内容や範囲が共有できていない

フォークリフトの事故の防止対策

フォークリフトの事故を未然に防ぐには、次の4つの防止対策を徹底することが重要です。

・進行方向(前後左右)の指差呼称確認の徹底

・フォークリフトの走行経路への明示と立ち入り制限

・シートベルト着用、低速走行などの安全運転を徹底

・用途外に使用しない

たとえば、運転手なら「どんなに慣れてきても指差呼称確認を忘れずに行う」「作業効率<安全運転」の意識を持つことが大切です。安全第一の走行ができれば、必然的に誤った用途や操作で運転することも減らせるでしょう。

一方、フォークリフトにまつわる事故をなくすには周囲の防止対策も欠かせません。走行経路や作業範囲を作業者全員で共有する、作業範囲に安全装置(車止めや停止ライン)を設けるなど、現場全体の徹底した管理が、事故の防止につながります。

まとめ

フォークリフトの事故は毎年起こっていて、絶えることがありません。だからこそフォークリフトを扱う業種では事故防止、再発防止への工夫が欠かせません。事故を防止するには、フォークリフトの運転者と周囲の作業者両方の安全への意識が重要です。ベテランの操縦者でもトラブルの可能性はゼロではないため、現場では常に事故のリスクを頭に入れて作業しましょう。

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