コンプライアンス

どうすればいいの?物流現場スタッフのメンタルヘルス対策

2020.12.16

どうすればいいの?物流現場スタッフのメンタルヘルス対策

昨今の不安定な経済情勢や「新しい生活様式」の取り入れなど多くの人のライフスタイルが急激に変化しています。そんな状況で、改めて重要性を増し注目されているのがメンタルヘルス(心の健康)です。

この記事では、物流現場においてスタッフのメンタルヘルス対策をどのように実施すればよいのか、4つのケアについてなど、基本的な考え方とともに解説していきます。

物流現場のメンタルヘルス対策が難しい背景

短時間・短期間勤務のスタッフの存在

物流現場では、フルタイムの正社員や契約社員だけでなく、短時間・短期間勤務のスタッフも多数勤務していることが多いかと思います。短時間・短期間勤務のスタッフについても、事業者はメンタルヘルス教育をすることが望ましいのですが、現実的にはスタッフ毎に働く時間が異なったり、入社の時期が異なったりすると、網羅的に教育をすることが困難です。

教育担当者による偏り

また、一つの企業で複数の現場を持っているケースが多いことも物流現場でのメンタルヘルス対策を難しくさせています。地理的に離れた場所に複数の現場があると、教育担当者も当然ながら複数人になります。そうしたとき、教育する担当者によって伝えることに偏りが発生する場合もあります。

深夜勤務によるメンタル不調のリスク

さらに、24時間稼働している事業所では、深夜勤務による昼夜逆転による自律神経の乱れから、うつ状態等のメンタルヘルス不調を引き起こすリスクも高くなります。

メンタル不調のリスクが高く、教育を行うことが困難であることが、物流現場でのメンタルヘルス対策の特徴といえるのではないでしょうか。

現場スタッフへのメンタルヘルス対策のポイント

では、このような状況のなかで、網羅的・統一的にメンタルヘルス教育を行うために、どのような工夫が考えられるでしょうか。 この記事では弊社で行っている以下の3つの取り組みを紹介します。

入社時に教育する

勤務する時間帯や期間が揃わない場合でも、スタッフ誰もが必ず教育を受けられる機会といえば、入社時です。

入社時の安全衛生教育実施の際にセルフケア教育を加えていただくことをお勧めします。また、教育を行う際には、現場責任者やアルバイトリーダーなどメンタルヘルスに関する専門知識のない方が行うことが殆どですので、教育内容の偏りが出ないよう、統一の教材を用意します。

動画教材を用意する

教材は、テキストよりは動画教材がよいでしょう。動画教材であれば、一度作成・購入してしまえばスタッフが入社する度にそれを再生するだけで良いため、誰でも同じ教育を行うことが可能です。

動画を視聴することに加え、動画教材の内容を簡単にまとめたA4用紙1枚程度の資料を渡すことで、より理解度を高めることに繋がります。

相談窓口を設置する

また、相談窓口の設置も効果的です。どんな勤務シフトのスタッフにも対応できるよう、まずは24時間受け付けられるメールによる相談受付窓口を設置することをお勧めします。また24時間対応の外部の相談窓口もあります。そうした外部の窓口と提携することを検討してもいいかもしれません。

メール相談はすぐに返信できなくても、悩みのあるスタッフが思い立ったらすぐに連絡できるということが大切です。相談担当者がその悩みに気づいて、その後、電話や対面による相談対応でフォローしていくきっかけとなり得るからです。このような窓口を設置したら、メンタルヘルス教育で相談窓口のチラシを配布するなどして、全スタッフに周知をしておきましょう。

そもそもメンタルヘルス対策に取り組む理由

企業の責任として取り組む必要がある

そもそもメンタルヘルス対策は、企業の責任として取り組まなければならないものです。

労働安全衛生法第69条では、

「事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めなければならない。」

と定められています。

つまり、企業には労働者の健康を保持増進するための対策を講ずることが求められているということです。

また、労働契約法第5条では

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」

といういわゆる「安全配慮義務」が明文化されています。

これらの条文に示されている「健康」や「生命、身体等の安全」には、心の健康も含まれています。

さらに、職場のパワーハラスメントによってメンタルヘルス不調や、従業員の生産性や意欲の低下を招き得るとして2020年6月1日(中小企業は2022年4月1日)に施行された改正労働施策総合推進法では、パワーハラスメントの防止措置が事業主の義務とされています。

つまり、企業が適切な対策を講じずに職場におけるストレスが主な原因となり心の健康問題を発症させてしまったと判断されれば、企業側に責任があるとされる可能性があるということです。

また、最近では、CSR(社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも企業が従業員の心の健康を維持・促進することが社会的ニーズとなっています。

生産性の向上や企業成長につなげる

企業でメンタル不調者を発生させた場合、企業側に損害賠償等のリスクがあります。にもかかわらず、日常的なメンタルヘルス対策はコストがかかるだけでメリットが少ないと思われがちです。

一人のメンタル不調者が発生した場合、会社が受ける損害はその方が就業していないことによる労働力の損失や復職支援にかかる費用、賠償金だけに留まりません。

メンタル不調の原因には職場の環境や人間関係等が影響している場合が多いと見られています。このような組織には、メンタル不調を発症していなくても、問題を抱えている従業員が隠れている可能性があるということになります。つまり、メンタル不調者の発生は、その組織の問題を表面化している言わば氷山の一角に過ぎないのです。

例えば、メンタル不調を抱えているが気が付いていない人、度々当日欠勤や遅刻を繰り返す人、作業に集中できずに同僚とのおしゃべりに夢中になってしまう人、職場に不満を抱えてそればかり考えている人等…。

このような従業員が増えれば、当然、業務の生産性は低下します。生産性が低下することで、企業の業績は悪化します。

このように、メンタルヘルス対策は事後対応だけでなく、予防が重要であることがご理解いただけると思います。企業の成長や生産性向上のためにも、企業は積極的に、ひとりひとりが毎日イキイキと働けるよう、サポートすることが重要です。 

予防のためのメンタルヘルス対策の具体的な方法として、「4つのケア」をご紹介します。

働く人すべてに役割がある(4つのケア)

労働者の健康を保持増進するための対策が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法を定めたものが「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針)です。この指針の中では、メンタルヘルス対策を効果的に実施するためには、「4つのケア」が継続的・計画的に行われるようことが重要だとされています。この「4つのケア」とは、職場で働く人全員が持つメンタルヘルス対策に係る役割のことです。

セルフケア

セルフケアとは労働者自らが実施するメンタルヘルス対策のことです。ストレスやメンタルヘルスの正しい理解、ストレスへの気づきと対処等を指します。事業者は、労働者に対して、これらのセルフケアが行えるよう教育・環境整備等の支援を行うことになります。

ラインによるケア

ラインによるケアとは管理監督者が実施するメンタルヘルス対策のことです。職場環境の把握・改善、労働者からの相談対応、職場復帰における支援等を指します。事業者は、これらのことが適切に行えるよう管理監督者に対して教育を行う必要があります。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、セルフケア、ラインケアの支援として実施するメンタルヘルス対策のことです。事業場内産業保健スタッフとは、事業場内の産業医、衛生管理者、保健師、人事労務担当者等のことで、セルフケア及びラインによるケアが効果的に実施されるよう、労働者及び管理監督者に対する支援を行います。また、具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案や事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口を担う等、メンタルヘルス対策の中心的な役割を果たします。

事業場外資源によるケア

事業場外資源とは、事業場外の機関・専門家のことです。事業場外資源によるケアとは、外部から情報提供や助言を受けるなど、サービスの活用、ネットワークの形成、職場復帰における支援等を行います。

まとめ

物流現場では、さまざまな働き方のスタッフに網羅的・統一的にメンタルヘルス対策を実施するには工夫が必要です。現在の職場の状況の中で実施できるタイミングや誰でもできる方法を検討し、ルール化することが必要不可欠です。

仕組み作りには多少の労力もかかりますが、仕組みさえ作ってしまえば安定して継続が可能です。企業としての社会的責任を果たすだけでなく、生産性の向上や企業成長につなげるためにも、ぜひ、予防としてのメンタルヘルス対策を積極的に実施していきましょう。

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