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ハインリッヒの法則と「ヒヤリ・ハット」の重要性

2021.06.02

ハインリッヒの法則と「ヒヤリ・ハット」の重要性

「ハインリッヒの法則」はご存知でしょうか。様々な場面で使われるので聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。この記事ではハインリッヒの法則の成り立ちやなぜ様々な分野で応用されているのか、物流現場におけるハインリッヒの法則の考え方について解説いたします。

ハインリッヒの法則とは

1:29:300の法則

ハインリッヒの法則とは、「1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と300件の怪我に至らない事故がある」というものです。ハインリッヒの法則は労働災害における怪我の程度を分類し、その比率を表しています。その数字から1:29:300の法則と呼ばれることもあります。

労働災害の統計から導き出された法則

ハインリッヒの法則を提唱したのは、ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒです。ハインリッヒは損害保険会社に所属する統計分析の専門家でした。彼が工場の労働災害における調査をした結果、1件の重大事故が起こる背景には29件の軽微な事故と300件の怪我に至らない事故があったことを発見し、1931年「災害防止の科学的研究」という本でこの法則を発表しました。

ハインリッヒの法則の解釈

重大事故とヒヤリ・ハットは同じサイコロの異なる面

ハインリッヒの法則が示しているのは重大事故の背後には一定数の軽微な事故や「ヒヤリ・ハット」があるということです。

重大事故になるか「ヒヤリ・ハット」で済むかはあくまでも確率の結果であるということです。

重大事故になるか「ヒヤリ・ハット」になるかは偶然であり、サイコロを振って出た目が1だったか6だったかと同じという考えです。330面のサイコロのうち、1つの面が重大事故であり、29面が軽微な事故、残りの300面が「ヒヤリ・ハット」であると想像してもらえばわかりやすいでしょうか。

重大事故という「結果」は不安全な行動や不安全な状態という「原因」から生まれるものであり、重大事故と「ヒヤリ・ハット」はひとつのサイコロの異なる面でしかない、という考えることができます。

重要なのは数字ではなく考え方

この考え方に基づくと「ヒヤリ・ハット」で顕在化した危険に対策を講じる事で重大事故の発生が抑止できると考えられます。これがハインリッヒの法則の本質的な部分です。

この考え方は労働災害以外でも同じように当てはめることができます。「1件の重大なクレームの背後には29件の軽微なクレーム、300件の不満がある」、だとか、「交通事故においても1:29:300の法則が成り立つ」といった言説をよく見かけます。

当然ながら1931年のアメリカの(一部の)労働災害の比率がそのままクレームや交通事故に当てはまるわけがないのですが、一種の比喩として使われているようです。

ちなみにハインリッヒと同様に労働災害の起きる確率を分析した法則として、「バードの法則」「タイ=ピアソンの法則」というものもあります。物損事故やニアミスを加えて分析したものですが、ハインリッヒの法則とは少し数字が違っているので興味のある方は調べてみると面白いかもしれません。

これらの法則は数字の違いはあれど共通して重大事故の背後にはより多くの軽度な事故、さらにその背後にはより多くの「ヒヤリ・ハット」があると主張しています。

ハインリッヒの法則と「ヒヤリ・ハット」

「ヒヤリ・ハット」を見逃さない

物流現場においてもハインリッヒの法則の考え方は有効です。労働災害抑止や品質向上において、「ヒヤリ・ハット」を見逃さず対策を行うことで重大事故を未然に防ぐことができます。

重大事故は330回目に起こるわけではありません。「ハインリッヒの法則はサイコロのようなもの」と説明しましたが、サイコロで考えればわかるように、「6」の目が出る確率は1/6ですが必ずしも6回目まで「6」の目が出ないわけではありません。事故も同様で、1回目で重大事故が起きることも十分ありえます。

そもそもハインリッヒの法則の1:29:300という数字は100年近く前のアメリカの統計データに基づいた数字であって決して普遍の真理というわけではありません。事柄によっては1:2:10かもしれませんし1:3:30かもしれません。

労働災害にしても品質事故にしても、「ヒヤリ・ハット」が起きた際には、1度目で重大事故にならなくてよかった、と考え2度目が起こらないうちにできる限り早期に対策を行わなければいけません。

「ヒヤリ・ハット」はまず共有

「ヒヤリ・ハット」が起こった際には、関わる関係者内で事例共有を行います。

「○○な状況で○○ということが起きた。今回は「ヒヤリ・ハット」で済んだが場合によっては○○になる危険性がある」というように情報を共有します。

情報を共有してそれぞれの作業者が十分に注意を払うだけでも事故のリスクを下げることができます。抜本的な対策は費用や手間もかかるため、実際にはすぐに実施するのは難しいかもしれませんが、情報共有であればすぐに実施できるはずです。

「ヒヤリ・ハット」の共有には心理的安全性が重要

このときに必要なのが組織の心理的安全性です。「ヒヤリ・ハット」があったときに本人が「こんなところで事故を起こすのはチームの中でも自分のようにうっかりしている人だけだ」と思ってしまったらその事例を共有できなくなってしまいます。

大抵の場合、同じ組織の中で一人だけ極端にうっかりしているということは実際にはあまりないです。程度の違いこそ多少あれ、その日その日の体調や心配ごとなどに左右されてほとんどの人が同様のことをする可能性が高いと思って間違いないです。

組織の心理的安全性を高めることで、安全で品質の高い現場へとつながります。

まとめ

ハインリッヒの法則に基づいて考えると、重大事故を防ぐためには軽微な事故や「ヒヤリ・ハット」の対策を行うことが有効だということがわかります。労働災害における分析をもとにしたものですが、その考えは様々な物事に応用でき、物流現場においては安全・品質において応用することが可能です。

「ヒヤリ・ハット」の事例を見逃さず、対策を行っていくことで重大事故を防いでいくことが重要です。「ヒヤリ・ハット」の共有のためには組織の心理的安全性が必要となります。

現場の雰囲気作りもひとつの安全対策・品質向上施策と捉え、取り組んでみてはいかがでしょうか。

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