物流知識
在庫のABC分析 EC倉庫での活用方法
2021.04.21

この記事ではEC倉庫における在庫のABC分析について、やり方と具体的な活用方法について解説します。
ABC分析は比較的取り組みやすい分析手法であり、倉庫管理の基本として必ず押さえておきたい知識です。
ABC分析とは
ABC分析とはアイテムごとの重要度を分析する方法のことです。
一般的なマーケティングにおいては、どのアイテムが重要度の高いものなのかを客観的に決めることができ、在庫数や入荷頻度の調整などに使われます。
物流現場で使われる場合には、在庫の配置を決める際に使われることが多いです。
ABC分析の方法
ここでは、物流現場における出荷個数データを用いたシンプルなABC分析の一例を見てみましょう。
物流現場において最もよく使われるのは一定期間内の出荷個数データを用いた最もシンプルなABC分析です。
出荷頻度が高い順に並べて、上位30%をA品、上位30%~70%をB品、70~100%をC品と決めます。
A・B・Cのそれぞれの比率は分析の結果をどのように活用するかによって調整できます。
過去の出荷データを元に以下の表のように整理することでABCを分類することができます。
商品1と商品2の出荷頻度が特に高いということが分かりました。この結果をもとに在庫の配置を決定していきます。このような場合、実際には事前に決めたABCの比率は重要ではなく保管スペースとの兼ね合いを見ながら調整することになります。
このように、EC倉庫の実務においては、出荷頻度別にピッキングエリアのどこに格納するのか判断するためにABC分析を用います。
ABC分析でピッキング導線を短くする
ABC分析によって出荷頻度を明らかにすることで、ピッキング動線を短くすることができます。
ピッキングエリアを出荷作業エリアから近い順にAランク・Bランク・Cランクと分類し、出荷頻度が高い商品を出荷作業場に近いAランクのエリア、Bランクのエリア、Cランクのエリアに格納していきます。
出荷頻度が高いものほどピッキング動線を短くし、頻度が低いものはピッキング動線を長くすることによって、全体でピッキング動線を短くすることができます。
リザーブロケに移動して保管効率を上げる
ABC分析の結果、出荷数が極端に少ないものがあることが判明した場合、リザーブロケに移動することも有効です。
リザーブロケとは通常のアクティブロケとは分かれた保管エリアのことです。ピッキング効率に配慮したアクティブロケと異なり、保管目的だけのロケーションとなります。例えばフォークリフトで上部空間に保管したり、レール式の移動棚を用いて保管したりするなどの手段があります。
ただし、過去のデータでは出荷数が少なかったとしても価格設定の変更や季節変動によって出荷数が上がってくることもよくあります。そのため、リザーブロケは出荷の際にアクティブロケに移動しておくといった作業も必要となりますので、マーケティング担当者と連携して事前に準備ができると安定した運用が可能になります。
出荷の傾向は変化があるので原データを確認する
ABC分析は過去の傾向が未来にも続くことを前提とした分析・改善の手法です。人気がある新製品は過去の出荷データはなくてもA品になりますし、季節波動がある商品は季節によって出荷頻度が変化します。セールの対象商品になればある日突然出荷数が増えます。
通常時の傾向をつかむ際にはABC分析はある程度有効ですが、日々の変化は必ず原データを見て確認し、大きな変化を発見したときにはすぐにロケーション変更やピッキング方法を変更するなど対処が必要になります。
日々の変化を見つけやすくするためにABC分析を行って気にかけておくことが倉庫管理者としては必要です。
応用的なABC分析
最もシンプルなABC分析は出荷個数に応じた分析ですが、一般的なマーケティングにおいては、単価と出荷数を掛けた商品別売上高や、商品当りの粗利(利益)と出荷数をかけた商品別の粗利高を用いた分析を行います。
例えば、商品別売上高を用いたABC分析はこちらです。先程の出荷数ベースの分析結果とは大きく異なる結果となりました。
この分析を見ると、商品3が売上の柱ということがわかったので商品3をより多く売るための施策を重点的に実施すべき、ということがわかります。
物流現場においても同様に金額などによる重み付けを行うことでより幅広い分析を行うことができます。
例えば、破損や紛失の頻度が高く、弁償を行わなければならない場合には発生件数と弁済金額を掛け合わせて商品別の弁済金額を算出し、高い順に対策を講じる、といったことも可能です。
まとめ
ABC分析は物流倉庫では非常によく使われる分析手法です。考え方は非常にシンプルなので、ピッキング工数の削減をしたいときの手法として活用してみてください。
また出荷数だけでなく、商品ごとの金額などと掛け算することで重み付けを行った分析も行うことができるということも知っておくとマーケティング担当者と会話する際に理解が深まるかもしれません。